でかいの日記帳

2009/1/3 Saturday

K-20怪人二十面相・伝

Filed under: - dekaino @ 22:01 このエントリをはてなブックマークに追加 K-20篋坂∝吾私のはてなBookmark被リンク数

K-20怪人二十面相・伝を観ました。
日本テレビ系で執拗に流されるCMで、これバットマンのパクリかな? ああまたテレビ局制作のつまらない映画だなって一見思ってしまいがち。しかし実際に観たら期待を裏切ってめっぽう面白いのです。

北村想の怪人二十面相・伝が原作とされていますが、原案といっていいくらいに違う話になっています。
まず舞台が日米開戦がなかった時代の昭和24年という架空史の世界です。つまり米国はモンロー主義のままヨーロッパ戦線にも参戦せず、おそらくヨーロッパや北アフリカはドイツを中心とした第三帝国が支配しているという世界観。核兵器もおそらく開発されていなかったと思われます。
当然東京大空襲もなかったわけで、震災後の建物がそのまま残っている昭和24年の帝都が素晴らしいCGで再現されています。

ストーリーや演出もかなりよい出来。それも当然で、監督・脚本は佐藤嗣麻子。15年ほど前にテレビ東京の深夜枠でやっていた学園ホラードラマ、エコエコアザラクやねらわれた学園の劇場版の監督・脚本をやっていた、いわゆるキャラ萌えではない面白いストーリーの映画を作れる人です。

本作でもスピーディーな展開と映えるアクションの連続でとても面白いです。
大人の事情でどうしてもつらいキャスティングがありますが、それも巧く誤魔化しています。具体的に言えば松たか子なんだけど。良家のお嬢様がレールに乗って結婚するって設定なら、二十歳そこそこか下手したら十代のはず。なんでまた松たか子なのか? 少女じゃないのに少林少女の柴咲コウぐらいひどいキャスティングです。正直いまの松たか子ってお嬢様の母親役で出ても不思議じゃない貫禄ですよね。
でもそんなの気にしない。松たか子は二十歳だと劇中設定したなら、15〜25歳のリアルな若い女優をまったく出演させないのです。こうすることで、なんとなく観客はああ若いお嬢様なのかもなぁと納得してしまうのです。もし一人でもリアル十代の女性が松たか子の隣に並んだらその魔法は解けてしまうはずです。おかげで初々しい女優好きの人にはちょっとさびしい映画になってしまいました。
この大胆な思い切りのいい詐術が気持ちいい。嘘をつくというのはこういうことだという巧みな演出! かっこいいぜ佐藤嗣麻子。
スターウォーズだってレイア姫がキャリー=フィッシャーだったし、スパイダーマンだってヒロインのメリー=ジェーンがキルステン=ダンストなんだから、いけてない女優がヒロインやってても映画は面白く作れるし、ヒットだって可能なはずなのです。(それでもかなりのハンデだぜ。松たか子)

アクションについてもかなり冴えてます。本作はサーカスの曲芸兼手品師が主役なのでサーカス曲芸やそれに類するアクションがたくさん出てくるのですが、これがワイヤーアクションじゃないんですよ。もちろんCGで誤魔化しているのでもなく、生身の体術でこなしているのです。中国雑技段バリのアクションが心地いい。ワイヤーアクションやCGと違って動きが物理法則に反していないのでテンポもキレもよいかっこいいアクションシーンに仕上がっています。

細かいところをつっこむとテスラ装置の操作盤の文字がすべてドイツ語だったのですが、テスラってアメリカに移民しないまま、ドイツ語圏で研究開発したと言う設定なんでしょうか? テスラはオーストリア・ハンガリ帝国領内の出身なのでその可能性は高い。もしくはアメリカ人も輸出品にはドイツ語の銘版をつけるくらいアメリカの地位が低い世界観と言うことなのでしょうか? まぁ確かに1940年代にアメリカがモンロー主義を貫いていたら今のメキシコかブラジル程度の国際的地位しかなかった気もしますね。
世界観を必要以上に説明しないところも嘘のつき方が巧いなぁって思います。

また、孤児が住む貧民街はノガミにある設定、そして主人公が住む盗人宿は浅草という設定になっています。ノガミは当然上野の符丁なんでしょうが、だったら浅草もエンコって符丁で呼ぶべきじゃないのか? なんかノガミと浅草って言葉が一緒に出てくるとすわりが悪いです。ノガミ&エンコ または 上野&浅草のどちらかにしてほしい。大人の事情で浮浪児が住むところに実名の上野を出すわけにはいかなかったというところなのかな?

同じ日本テレビ制作の252とはまったく違う次元の出来の良さ。佐藤嗣麻子の名前がメジャーになるかも知れないし、下手な宣伝のおかげで不入りのまま早々に公開が終わってしまうかも知れない、先が読めない映画です。でも面白いことは確か。劇場の大スクリーンで観たい方はお早めに。

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